。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「ねぇユウくぅん、あの金魚とってぇ」
すぐ近くで、同じように浴衣で着飾った若い女が甘ったるい声を上げた。
「よっしゃ。ミカ、待ってろ。お前の為にとってやる!」
と、彼氏と思われる…女と同年代の男が腕まくりをしてポイ(金魚をすくう丸い輪に和紙を張ったもの)を構えた。
いいな
あたしも戒に金魚をすくってもらいたかった。
下手でも、一匹もすくえなくても、あたしのために一生懸命すくってくれる。
(なんかあいつは色んな意味で器用そうだけど…)
その姿を見るだけで幸せになれる。
だけどあたしの隣に戒は居ない―――
ま、仕方がないか…あいつは来たがってたけど、バイトだし。
それにあたしが金魚をすくって、とお願いするキャラじゃないし。
ってか、二人で真剣に勝負しそうだな。
戒が隣に居ない分―――あたしはいつもより深くあれこれ想像してて自分の世界に入り込んでいた。
だから、
「お嬢…お嬢じゃありませんか!」
とキョウスケじゃない野太い誰かの声を聞いて、はっと我に返った。