。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「ねぇ叔父貴。ついでに聞いていい?」
「何だ?」
「たいぎめーぶんって何??」
「…………」
叔父貴はちょっとだけ目をまばたくと、
「辞書で引いて調べろ」なんて冷たい。
あとでケータイで意味を調べてみたら、大義名分とは…
『 行動のよりどころとなる道理。また、事を起こすにあたっての根拠』と書いてあった。
なるほどぉ!!
「青龍会本部に行く前に、屋台でも回るか?お前、りんご飴好きだったろ?買ってやるよ」
そう優しく微笑んで、いつものように優しい手付きで頭を撫でられる。
あたしは素直に頷いた。
覚えて―――くれてたんだね。
「叔父貴は焼き鳥が好きだったよね。レバーだっけ?」
「俺はレバーなんてもん食わん。好きなのは雪斗だ。あんなもん食いもんじゃねぇ」
「あはは♪そうだっけね。でもレバーは栄養あるんだぜ?」
言ったあと、はっとなった。
あたし……今、普通に雪斗のこと話題にしたよね…
叔父貴も―――……
叔父貴も同じように口を噤んで、複雑そうにあたしを見下ろしていた。
「……行くか」
そう言われて、手を一層強く引かれた。
あたしはあっけなく叔父貴の腕の中に収まり、素直に頷いてゆっくりと歩き出した。
「そうだ。これ浅田組の奴らからお前にって」
叔父貴はそう言って金魚が泳ぐビニール袋をあたしの前に掲げた。
「お前が守った金魚たちだ」
そう言って手渡された金魚は、さっき見たときと同じようにひらひらと尾をなびかせて水の中を泳いでいる。
「良かったな、お前ら~♪これは戒へのお土産にしよ♪」
ご機嫌に言うと、叔父貴はちょっと寂しそうに表情を曇らせた。
また―――
寂しそうな顔………
ドキリと胸が鳴って、あたしは心臓の辺りを押さえた。
―――祭りの会場に戻るまで、あたしたちは当たり障りのない会話をしながら歩いた。
切れた鼻緒を叔父貴が応急処置で直してくれたお陰で、足も痛くないし。
でも―――
キョウスケが絆創膏を貼ってくれた場所だけは
妙にヒリヒリと擦れて
痛かった。