。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。




戒―――……



遠くで……なんて、そんなこと言わないでよ。


あたしはいつだってあんたの近くに居たいし、居て欲しいって思ってる。


戒を間近で感じていたいんだよ。


花火を見ようと人が一番多くなる時間帯。


客たちが賑やかな声を上げてあたしたちの間を横断している。







『不安になるなよ。


俺の気持ちは変わらへん。



変わらずお前を好きやし、今すぐにでも結婚したい思てる。





だけど選ぶのはお前や―――』




戒は寂しそうに笑って、ケータイを耳から遠ざけた。


「…ま、待って!」


慌てて声を上げると、人ごみの中戒がこっちに向かって僅かに口を動かせた。









“愛してる。






朔羅―――”








そう動いたように見えたのは気のせいか。



戒は、くるりと身を翻し人ごみの中に消えた。





戒―――――…………








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