。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。




『気にすることない』って―――




気にするよ。




だって叔父貴―――今にも泣き出しそうな顔してる……



さっきの電話―――…一体何だって言うの……




どうしたの?




何があったの?




聞きたいことはいっぱいあった。でも、聞いてもあたしに何ができるんだろう。


会社のトラブルだったらあたしにはどうしようもできないし……





ふわっ




あたしは叔父貴の肩を両腕で抱きしめた。


叔父貴はあたしが困ることを言ったりしない。だからあたしは叔父貴の気持ちを知ることができない。


あたしはきゅっと力を入れると、叔父貴の頭を抱き寄せた。


いつも叔父貴がしてくれてるように、いつもあたしを守ってくれてるみたいに。


今度はあたしが抱きしめる番。あたしが叔父貴を守ってあげる番。


「…ふ……どうしたんだよ。急に」


叔父貴が僅かに笑ったけど、その声は無理しているのように明らかに上ずっていた。


叔父貴の肩や背中の感触、香りや温度は




戒とは全然違った。




戒より上背があるし、筋肉もしっかりついている。


ほんの僅かにつけた柑橘系の爽やかな香水に混じって、戒より濃厚なタバコの匂いが香ってくる。


体温は戒よりだいぶ低くて、艶やかな黒い髪は戒のふわふわした感触と違い、さらりと心地いい。






あたしのたった一人の叔父貴―――……




泣かないで。




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