。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。



はっきり言って私には青龍と白虎の盃の件には興味がない。


両者がどうなろうと、どうでもいいこと。



しかしながら―――私は今この状況を楽しんでいる。




―――この夜、運命をも変える動きが各々に降りかかった。




◇◆◇◆◇◆◇





しんと静まり返った龍崎家の縁側で、一人の少年があぐらを掻きぼんやりと空を眺め上げている。


その目は焦点が定まっておらず、視線はあやふやなまでに空と地上を行き来していた。


「朔羅―――……」


愛おしい女の名前を呼んで、


龍崎 戒は手のひらを見つめていた。


その手のひらの中で朔羅を思い浮かべて、彼はその手をぎゅっと握った。


「なぁんで、行かせちまったんやろな、俺……」


思わず出た後悔の念に慌てて口を噤むも、誰も聞いてはいないし、そもそも咎める人間もいない。


深くため息を吐いて彼は夜空を再び見上げた。





◇◆◇◆◇◆◇


「あ~あ…終わっちゃいましたね」


遠く離れた花火会場で少女の残念そうな声があがった。


少女の名前は川上 理子。朔羅の親友で、傍らに朔羅と同居人の白虎の男、


鷹雄 響輔を連れている。



響輔は曖昧に笑って、同じように空を仰いだ。




「戒さん……あなたも損な性格ですね」





響輔は戒を龍崎 琢磨に託したことを知っている。


知っていて、敢えて止めなかった。


彼もまた―――損な役割を担っているのだ―――






強く美しく―――心優しき白虎の少年たち。



歳若い彼らが今後どう動くのかが楽しみではあります。




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