。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


あたしはぎゅぅっとテディを握って、


それでもはじめて知る痛みのような高揚のような不思議な感覚を胸に覚えて、


ドキドキと心臓を鳴らしていた。


「あたしも一つ新発見したわ。あんたって意外に金の亡者だったんだね」


言い返してやると、





「大阪は商人の街や。儲けのことを考えるんは、当たり前やで」





響輔はにやりと不敵に笑い、


不覚にも、あたしはこの瞬間―――





何かに堕ちた―――…気がする。←間違いであって欲しいと思うけど……


何となく好意を持っていたことは認めざるを得ないだろうけど、決定打はこの一言だと思う。


あたしはお金に正直な人が好き。(顔が可愛ければなお好き)


貧乏はいやだし、野心がない人はもっと嫌い。


冗談かどうかは分からないけど、こうまでストレートに言われたことがないから、


きっとはじめての感覚に戸惑ったのね。






ママ……


あたしはやっぱりママの娘で、


以前聞いた鴇田との出会いみたいに最悪のシチュエーションだけど……


あたしはこいつのことがちょっと気になります。


やっぱり血なのかな。





―――『てめぇふざけてんじゃねぇ!ぶっ殺されてぇのか!!』





ママが始めて聞いた記念すべき鴇田の言葉はそのとき、ママにとってそれはそれは恐ろしかったみたい。


鴇田はママに言ったわけじゃないケド。ママとは全くの無関係な人に言ったみたいだけど。


初めて見たのがそれだったら、あたしはドン引き。


だけどママは恋に堕ちたんだよね。


人が恋に堕ちる瞬間って分からないもんだね。





『こんばんは、って言うべきじゃないですか』






あたしも、もしかしたら響輔の声を聞いたときから―――恋に堕ちてたのかもしれない。


鴇田のときよりは幾分かましだけど、でも鴇田より話が通じないよ。



ママ。




でもあたしの中で何かが変わりつつあるのは確か。




あたしはぎゅっとテディを握り、口元に笑みを浮かべた。



東京まであと一時間。



早く着いて欲しいようで、このままずっとこうしていたい。


そう思うのは変かな??






:*:・゚'★.。・:* ICHI END ☆♪・:*:・゚'★.。・





< 591 / 592 >

この作品をシェア

pagetop