軽業師は新撰組隊士!



苦労してるんだなぁ、と楓が思っていると、永倉は不意に手を見て


「あ、…ぁああ!わっ、悪い!そ、そのっ、手を握ったのはなんていうか…無意識で…!」


と言って、バッと手を離す。


「初だな。」


「初だね。」


「初ですね。」


原田、藤堂、それから沖田がそう言ったことに、楓はクスリと笑う。

たぶん、こんな会話なんて普通で、
でもそんなことで気が楽になるようだった。

この人たちの前なら、無理して自分を良く見せようとしなくていいんだ、と思えた。


(サーカス団だったら…)


最年少でトリになっている自分を良く思ってない人たちに、笑顔を貼り付けて接して、媚びへつらうのが日常だった。

スクリーンの中の主人公のように、それらを気にせず流すことはできなかった。

もし、そんな風にしていたら、世の中生きてはいけないから。




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