軽業師は新撰組隊士!



しかし、土方は再び


「泣け。」


と言った。


「あの、言っている意味がよく分からな…」

「泣いてねぇんだろ?」


楓の言葉を遮る土方。
そして、楓の頭を手でグイッと自らの胸に押しつける。


「泣け。初めて人を斬ったときは、誰だって……泣きたくなるもんなんだよ。」

「で、でも」

「いいから。命令だ。だいたいなぁ、俺は言っただろ?『なんかあったら俺んとこに来い』ってな。だがお前は三日間、一度も来なかった。その罰だ。だから、泣け。」


フン、と
鼻を鳴らして言う土方に、楓は苦笑する。


「は、はは…。それで罰ですか。ちょっと横暴じゃ…、――っ。」


言葉の途中で、涙がこぼれる。



――なんで、分かるんですか。

泣いてないことも、
必死に涙をこらえていたことも

きっと……いや、絶対に土方は見抜いていた。


(泣くことは、許されないと思ってたのに…)



「っ、ごめ、んなさい。ごめんなさい…っ!」

「…あぁ。」



人を殺した。
その罪を、一生背負い続ける。


だから、


「…よくやったな、楓。」


「っ、う…。うぇっ…く。」



――今だけ、今だけは、泣くことを許してください。




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