feel〜優しい体温〜
そこからまたハルトの車に乗り込んで、私達は帰路についた。


ハルト……すごいな。


初めて出会ったときは、もっと傷付きやすく、脆くて、どこか俯いてて……


でも今はまるで別人。


辛くて悲しい過去を乗り越えたんだね。それが強さになったんだ。


どんな想いだったろう……。


大切な人を失って、聴力や声も失って……。


きっと並大抵の努力じゃなかったよね?


それなのに私は何?


"恐い"


ただそれだけで逃げ続けて……。


そのくせ"私には夢がある"なんて言ったり、ハルトにだけ「頑張れ」なんて偉そうな事言ったり……


こんなんじゃ私、ハルトの光になれないね……


−家、着いたぞ。


「うん、ありがと。今日は色々話せて嬉しかった」


−俺もだよ。


「コンサート楽しみにしてるね!……あと……」


−あと……何?


「私……頑張る!手術の希望出すよ!」


そう言うとハルトは私の頬に優しく手をあて、へたっぴな言葉でこう言った……


「…が……ん…ば………ろう」


精一杯の一言が私の胸に響いた。


ありがとう……頑張るよ。


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