青い春と風の中で
重い足取りで、何とか校門の前に辿り着くと、ゆっくりと建物を見渡した。

1年前に、教育実習生として招かれた場所は、設立して50年も経っている古い建物だったせいか、今日から此処の学校に赴任することになった建物が、凄く綺麗に見えた。…失礼かも知れないけど。


「――おはよう」

「おはよう♪――」

挨拶する声が聞こえてきて、葵はハッと我に返った。

私の横で、女子高生が挨拶を交わした後に、砕けた会話で盛り上がりながら校舎の中へと入って行く。


先程より、生徒達の数が増えたような気がする。葵は、校舎内に入って行く生徒達を横目で見つめていた。


ふと気がつくと、生徒達の視線が葵の方に向けられていることに、何だか照れ臭いのと、くすぐったい気持ちになる。


――私、変な格好じゃないわよね??

思わず、自分の着てるスーツを見下ろした。 灰色のストライプのスーツ…なるべく地味なものにしたつもりなんだけどなぁ。


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