好きな人はスカウトマン。
グラスの中の氷を、挿してあるストローでツンツン突く。

これは、何か考え事をしている時の由佳のクセ。


これをしている時の彼女に話し掛けても、たいていは聞こえていないようだ。


あたしに、何から話そうか、どう話を切り出そうか、考えているみたいだった。


由佳のその仕種を見ていると、七分袖のシャツから伸びている腕の色が、なんだかオカシイ事に気がついた。


「ちょっと腕見せて!!」


あたしは由佳の腕をすばやく掴んだ。


「み、美雪、痛いよ〜」


袖をめくると、由佳の腕はアザだらけだった。
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