AKIRA
「触わんなって言ってんだよっ!」
そのまま、アキラは俺の手を思い切り振りはらった。
「アキ……なに、どうした急に?」
「やる気、ない」
アキラは俯いて、そう呟いた。
なんでやる気ない? マジで木下のせい?
俺は小さくため息を落とした。
「そっか、じゃぁ今日は仕方ねぇな、明日にするか?」
「明日も、無理」
何言ってんだ、アキラ。
「は? なんでだよ。折角うまくなってきてんのに、もったいない。夏休み終わって学校違うとかだったら気にすんなよ。どうせ家近いんだろ? いつでも……」
俺はあの日、結局、ここまで送って来たけど、アキラに一人で帰れるからって途中で別れたんだ。でも、それでも、ずっと一緒に居られるって信じてたから、帰したんだ。
なのに、なんだ、これは。
「うるせぇよ!」
「アキラ?」
「俺は、初めからテニスなんかやる気なかったんだ! なのにお前が無理やり誘うから、来てやってたんだよ。察しろよ!」
そこまで言われて、俺はどうすればいい。
あ、わかんなくなってきた。
もしかして……一番考えたくなかった事が過る。
「もしかして、嫌だった?」
なんで、そんな悲しくなるような事、言うんだよ。じゃぁなんで、今まで言わなかった?
嫌だって、もっと早く言ってくれてれば……早く……言ってくれてれば。