AKIRA

 ああ、こりゃ、外周走ってる女子だな。あの中に、久石が目当ての女がいるのか……。

 そう考えると、少しホッとする。

 晶じゃない、他の誰かだ。そう思うと、許してやる気持ちになるから不思議だな。

「そこの一年!」

 お、女子の方も誰か怒鳴られてんじゃん……俺は、いつも言われているその言葉に反応して、ちらりと声の方向を見流した。

「……あ」

 なんだよ……晶かよ……ったく、何やってんだアイツ。今日来たかと思ったら、既に注意されてやんの。

 でも、滅多な事がない限り、女子の先輩方も、晶を責める事はないだろう。

 なんたって、晶は全中で優勝してっからな。ありがたい戦力だろ。だけど、晶はそんな事を鼻にかけるような奴でもない、いい奴だって知ってる。

「次、ショート終わったら乱打してサーブな」

 練習メニューを叫ぶ寺倉先輩に従い、俺たちはそれをこなしていく。でも、フェンスが近いせいでうるさくて堪らない。

 晶は、まだ絞られてるのか、くどくどと女子の部長と向き合ったままだ。

 そのまま、俺は練習に集中して、言われたとおりのメニューをこなした。

「とりあえず球拾うぞ、一年!」

 サーブ練習も終わり、久石がそう言ってベンチに戻る。まぁ俺らは一年だから仕方ねぇけど、お前も少しは拾えっつうの。

 寺倉先輩はちゃんとボールは拾ってんじゃねぇか。どんだけ偉いんですか。

 そのまま俺は、腰を屈めて拾いながら、一つのボールで手が止まった。俺の拾おうとしているボールに、もう一つの手が伸びたからだ。



「あ」



 服部だ。

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