AKIRA



   ***




 俺はいつも教室で、晶の姿を見ているだけで、その声を聞いているだけで、今は満足してるんだよな。見つめる事は出来なくても、隣に居るって感じるだけでいい。

「おい、陽、数学の岩田、今日休みだって」

「へぇ」

「助かったよ、俺、予習して来てないもん、あいつすぐに誰にでも当てるからわかんねぇんだよな」

「そうだな」

 そんな他愛ない話の声の中にも、俺の中では晶の声だけがやけに大きく存在する。

「ア~キ~」

 くそ、服部の奴、また来やがった。

「なに?」

 晶、あんまりそいつに構うなよ……俺の平常心がどっかに行っちまうじゃないか。仲良く話してるとこなんか見たくねぇ……だったらその中に入ればいいじゃんって思うけど、なかなか出来ねぇし……ああ、俺ってへタレかよ。

 俺はそのまま、なるべく視界に服部を入れないように机に突っ伏した。

「何って、アキに会いに来てあげてるだけだよ。新しい学校で同級生も少ないアキを心配してだね」

 また服部の奴、抜け抜けと言いやがる。

「京子、お願いですから、この啓介の相手してやってくださいませ」

 ナイス、晶!

「え?」

「え、長田さん俺の相手してくれんの?」

 お前は女なら誰でもいいのかよ。




 でも……あの時の、服部の瞳は真剣だった。

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