誠-巡る時、幕末の鐘-



天皇に対してもあの男呼ばわりだ。


一回隠岐に流されただけではすまないらしい。




「これから酒を献上しにいくが、お前も来い」




篁の手には、確かに酒の入った容器がぶら下がっている。


もとより、行くつもりだったので異論はなかった。




「貴船の祭神に永久の暇ごいか」


「………」




この男、最初から本当に人間だったのかと疑いたくなる程的確に当ててくる。


あぁ、そういえばとフッと頭を懐かしい思い出がよぎった。




「私、あなたに初めて会った時、調伏されかけましたね」


「………あの時か」




篁の瞳も思い出すように細められた。


奏が雑鬼達を相手にして、調伏という言葉を使った時、この男が真っ先に浮かんだ。




「いきなり何も言わず、聞かずで真言唱え始められて……思わず返しちゃいましたよ」


「こっちは大変な目にあったぞ。いきなり雷落としてくるんだからな」




次の日、雷がいきなり落ちたと都人の間では噂になっていた。


当人達は全く気にしていなかったが。


むしろミエなどは、その時の帝といつこの噂が静まるか賭けをしていた。



< 488 / 972 >

この作品をシェア

pagetop