Яё:set




私は振り返って真っ暗な洞窟内に意識を集中させる。




私のただならぬ様子に隣のレイがゴクリと唾を飲むのが判った。




「何か…居る…」




ジリジリと後ずさる私に迫り来る気配。




─ヒタヒタ…




「レイ…逃げて…」




「えっ…!?」




─ヒタヒタヒタヒタ…




「いいから早く…!」




「でも、フウカ…!」




─ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ…




「早く!!走って!!」




私がそう叫ぶと同時にソレが姿を現した。




レイが「クソッ…!」と悪態をついて走り出した。




…レイは私が守る…!




道を塞ぐ様に立ちはだかると両手に意識を集中させた。




指先が冷たくなり、手の平がビリビリと電気を帯びる…。




ヒタヒタと生々しい足音で忍び寄るそれは、熊のような怪物だった。




─グウォォォォォン!!





大きく開かれた真っ赤な口からダラダラと垂れたヨダレが地に着くと“ジュウ…”という音を立てて剥き出しの岩が溶けたのだ。




いっそ熊ならまだマシだったかもしれない。




怪物を見据えながらそんな考えが頭を過った。




< 102 / 146 >

この作品をシェア

pagetop