夏の記憶
「優奈!おい優奈!ちょっと聞いてる!?」



不機嫌そうな梢の声に、わたしの意識が現実に引き戻される。



「わたしと梶田の運命の出会いちゃんときいてた~!?」



「う、うんうん、聞いてた聞いてた」



「うそ!絶対今、妄想モードだったでしょ!」



「聞いてたってば。えーっと、えっと…
雨の日に偶然入ったメンズのショップに梶田君がいて、その時初対面なのに3時間話しこんで、
それで仲良くなった…みたいな…」



慌ててうっすら聞こえていた梢の話をかいつまんで説明する。



「聞いてたならよし。
なんか~梶田学校だと普通なんだけど、私服超お洒落でまじビックリすんの。
わたし私服ダサイ人とか超ダメだから」


栗色のショートヘアーをいじりながら言葉を続ける梢の表情は、
遠くを見ながらとっても楽しそう。



「それで?優奈は?いつから朝比奈のことが好きなの?」


「わたしは…」



わたしはそう、中学3年生で同じクラスになってから。



あの子の存在に気づいてから…
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