夏の記憶
「第二次大戦の時はこのへん一帯からもずいぶん戦争に召集されてさ、戦死者もかなりでたんだぜ」


そういえば、小学校の授業でそんな話を聞いた気がする。


「そうなんだ」


わたしがなんとなく返事をすると、タケルはそれっきりなにも言わなかった。


二人の間を沈黙が流れる。


それはものの10秒くらいだった気がするし、5分くらい経ったような気もする。


とにかく、やけに変な沈黙が流れた。



わたしはその時やっと思い出した。


わたしは、タケルに告白するために夏祭りに来たんだった。


わざわざ梢と計画をたてて、浴衣を着て、梢と幸ちゃんに一芝居うってもらって。


しかも今の状況は、人気のない場所に二人きり。


まさに今が絶好の機会だったことに、わたしはその時気がついた。


「タケル」


もう一度タケルの名前を呼ぶ。


タケルの横顔が、ゆっくりとわたしの方を向く。
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