シザーハンズ


僕たちは孤児だ。
理由はよく覚えていないが、幼い頃にここに連れてこられた。

覚えているのは、ちょっとした迫害に遭っていたこと。
傷付けることしか出来ない僕。何も視ることの出来ない左目。
僕たちはひとりぼっちだった。

けれど、この場所で彼女に出会って、変わった。
僕たちはふたりぼっちになった。

歪んだフィルター越しでしか景色を見れない僕から、フィルターを取っ払って鮮やかな世界を観せてくれた。
ブリキのように強く閉ざした心に、暖かな光を与えてくれた。

僕たちは決して離れない。


「僕さ、ここ嫌いなんだよね」
そんなことを思いながら、ぽつりとつぶやいた。

「うー………私も、かな」

過去のことから他人と話すことが苦手になった僕らは、他人と背中合わせの生活にうんざりしていた。

「でも、大嫌いではないんだよね」
「私も」

二人は向かい合うと、相手が何を言おうしているのかわかりきってるというように、言い放った。

「だって、
リンに会えたから」
「レンに会えたから」

クククッ、とおかしそうにリンは笑った。それにつられて僕も苦笑してしまう。

「――――レンー、リンー?もうすぐ夜ご飯だから、降りてらっしゃーい」

先生の大きな声が一階から飛んできた。

「フフフっ………じゃあ、行こ?」
「うん」

僕はハルに手を引かれて、食堂に降りていった。

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