シザーハンズ

「あ。もう食べ終わってんじゃん。戻ろ?」
「うんっ」

リンのチョコが無くなっていることに気付き声をかけると、元気のいい返事が返ってきた。
チョコの包み紙をポケットにしまうと、リンは僕の手を引いて歩きだした。

戻る先はすぐそこにある大きな家。
そこはたくさんの子供達の「我が家」。
そして僕たちの帰る家。

「――ただいまぁー!」
「――…ただいま」
「二人ともおかえりなさい。ちゃんと手洗ってねー」

“先生”のおかえりを背後に、僕たちは二階にある自室へ向かった。
僕の部屋へ入ると、リンはドサッとベッドに座り込んだ。

「ねぇリン」
「ん?なあに?」

部屋には僕たちの声と、時計の針が時を刻んでいく音だけが響いている。

「僕たち、いつまでここにいるんだろう」

突拍子もない質問。答えは決まっている。けれど、リンはそんな疑問の答えを一緒に探してくれた。

「うーん………一人で生きていく強さを手に入れるまで、かな」
「そっか」

そして沈黙が訪れた。だけど、無言の沈黙、とは少し違う。
お互いに今の言葉を噛み締めていた。

「でもねレン」
「ん?」
「私たちは、ずっと一緒にいるよね?」
「…うん」
「離れ離れになんか、ならないよね?」
「うん」

思い詰めたようなリンの声。僕はそっとリンを抱きしめた。

「僕らはずっと一緒。ずっと。何も心配なんかしなくていいんだ」

諭すように言うと、リンはほっとしたようにはにかんだ。


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