Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

「――――横、に」

「横に?」

「一緒に――寝たい、です」

 先に進むのは、心の準備がまだだから。
 今はただ、先輩とくっついていたかった。

「なら、こうして寝るか」

 すると先輩は、自分の右腕を枕にし、私を抱きしめてきた。



「――――悪かったな」



 しばらくして、先輩はそんなことを言った。どうして謝るのかと聞けば、私に怖い思いをさせたんじゃないかと心配したらしい。

「オレもちょっと、歯止め利かなくなりそうだったからな……。ちゃんと、キスより先はしねぇーから。もしやりそうになったら、思いきり殴れ」

「っ!? そ、それはさすがに……」

「だからもしもの話だ。努力はするが、男ってのはバカだからな。好きな女を目の前にしたら、理性なんて吹っ飛んじまう」

「あ、あのう……だった、この状況も」

「ま、体には悪いわな」

「なら、離れた方がっ!?」

 途端、ぎゅっと力強く体を引き寄せられた。

「今は大丈夫だ。真白は、こうしてたいんだろう?」

「そう、ですけど……」

「余計なこと考えないで、寝ろ」

「いたっ」

 ぺちん、とおでこを叩かれ、布団を頭に被せられた。
 まだ寝る気にはなれないけど、先輩がいるうちに寝てしまおう。
 そうしたら、今度はいい夢が見られるかもしれないしね。

 *****

 しばらくして、真白は本当に寝てしまった。
 自分から言っといてなんだが、この体勢で寝られると、オレが動けなくなることを忘れていた。
 ゆっくり、頭の下にある腕を引く。起きてしまうかと思ったが、真白は意外と起きなかった。

「……ちゃんと起きるのか?」

 このまま、朝まで寝てるんじゃねぇーかって思えてくる。
 それだけ反応が無く、帰るのをためらっていた。



 ――ドンッ、ドンッ。



 ドアが叩かれ、呼び鈴が鳴らされる。
 藤原じゃないのか――?
 ドアに近付けば、ガチャっと鍵が開けられた。

「あ、やっぱりまだいた」

「お前かよ。呼び鈴まで鳴らすから誰かと思ったじゃねぇーか」

「気を使ったのよ。どーせイチャついてたんでしょ? あんたはいいだろうけど、真白は嫌がるからね」

「それはどうも。つーか、真白なら寝てるぞ?」

「じゃあおかずはテーブルに、っと」

「なぁ、まだ時間大丈夫だよな?」

「大丈夫だけど、急にどうしたの?」

「大事な話があるんだよ。詳しくはお前の部屋で話す」

「いいけど、真白に何かあったわけ?」

 藤原にも言ってなかったか。
 どんだけ気遣いしてんだよ。

「そうらしい。――あ、それから隼人も来るぞ」

「ちょっ、なんで先輩まで!」

「あいつの情報網がいるんだよ。そんなに嫌なら、お前の話は伏せててやる」

「……いいわよ。真白のことで動くなら、いずれ気付かれそうだし」

 観念したのか、藤原は肩を落とした。
 こいつもこいつで、変なとこで意地張るからなぁ~。
 素直じゃないというか、気遣い過ぎるというか。
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