Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

「チクッってするけど、我慢してくれな」

「はい……。大丈夫、です」

「いい返事だな」

 まずは、額にキスをした。
 すると少し、真白は拗ねたような顔をしているように見えた。

「どうかしたか?」

「……子ども扱い、された気がして」

「んなことしねぇーよ。それに、これからするのは子どもにしないだろう?」

 もう一度、額にキスをした。
 顔を見れば、真白は目を潤ませそっぽを向いた。
 こういうとこが可愛いんだよなぁ。

「上塗り、始めるか」

 真白から見て右側。首の近くに一つ。鎖骨にそって三つ。それに一つひとつ、上からキスをしていった。
 左側も同様。キスを落としていれば、真白はくすぐったいと言いだした。

「そう言えば、お前ここが弱いんだよな?」

 左側の首筋。そこに軽くキスをしたただけで、真白は身をよじった。

「ははっ。やっぱ大人しくできないか」

「そんなこと言われても……」

「ま、もう上塗りは終わったからな。――さてと」

 今からは、さっきの続きといこうか。

 ◇◆◇◆◇

 上塗りが終わったというのに、先輩は上から退いてくれない。
 さすがに、今のままだと恥ずかしくなってくるんだけど……。

「キスの続き、するか」

 怪しい笑みで、そんなことを言った。
 た、確かに中断してたけど……。

「もう、いいかなぁって」

「ほう。いいんだな?」

「ちがっ!?――んん」

 そ、そういう意味じゃないのにー!
 絶対意味をわかってるはずなのに、先輩はキスをしてきた。

「せんっ、ぱ――ゃっ!」

 今度は、キスが首筋に移動した。ゆっくり唇が上下して、耳元で先輩の吐息が聞こえてくる。

「息荒れーな?」

「そんな、のっ――」

 先輩が……そんなことするから。
 もどかしくて、体が変に熱くなっていく。
 悲しいわけじゃないのに、泣いてしまいそうな。自分でもわけのわからない感覚に、どう答えていいかわからない。

「嫌ならやめるが――どうする?」

「んんっ!――いやっ、じゃない。けど」

 左の耳たぶを、先輩は何度も甘噛みする。
 いやじゃないけど、くすぐったいその感覚に、私は身をよじった。

「変な……気分で」

 どう言っていいかわからない。
 胸が苦しいような、切ないような――…。

「今の自分がわからないって顔してるな?」

「? 先輩は……わかるん、ですか?」

「当然だろう。真白はな――」

 先輩の口が、耳元にくる。
 あの甘い声と吐息が、また私の体をおかしくしていく。



「オレに――欲情してんだよ」



 ちゅっ、と耳元で音がした。
 そのまま首から鎖骨に移動し、先輩はまた上塗りを始めた。

「よ、欲情、って……」

「オレを欲しい、ってことだ。ま、それはオレも同じだがな」

 ここまで言われてわからないほど無知じゃない。
 考えてないつもりだったけど……これが、そういう気持ちなんだ。
 キス以上は怖い。
 そんなことわかってるのに……。



 どうして私、拒まないの?



「真白は――どうしたい?」



 ――――あぁ、そっか。
 先輩はちゃんと、約束を守ってくれる。
 それを知ってるから、こんな状況でも怖くないままいられる。――でも。
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