Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

「いえ、これから食べようかと」

「普通の飯は食べれそうか? 一応、真白の分もあるが」

「お粥を食べようと思ってたので、ちょっとなら多分」

「ま、無理して食うことないからな。今日はオレも一緒にここで食うから」

 テーブルにお弁当を置くと、私の隣に座る先輩。
 朝からこうやって過ごすのは初めてだから、ちょっと緊張しちゃうかも。

「支度してるってことは、もう熱はないのか?」

「まだちょっとあるけど、大したことないですから」

「ちょっとってどれぐらいだ?」

「36℃8でした。動きにくいとかはないので、安心して下さい」

「それならいいが……本当にキツくなったら、保健室使えよ? もしくは会室でもいいんだからな?」

「ありがとうございます。ちゃんと無理はしないので」

「あと、何かあればすぐに報告。――これも守れよ?」

 そう言って、先輩は私の頭を撫でた。
 まだ、先輩に迷惑なんじゃって気持ちはあるけど、心配かけるのも悪いし。

「わ、わかりましたっ」

「迷惑とか思わなくていいんだからな?――そろそろ時間か」

 先輩が私のお皿も下げる。それだけでなく、そのままお皿を洗ってくれてた。そこまでしなくてもいいって言ったんだけど、これぐらいやらせろ、とのことで。

「ちょっととは言え、まだ熱があるんだから無理はするな」

 洗い終わると、先輩は私のカバンを持って外に出ようとする。さすがにそれは噂になるんじゃないかと思い、全力でお断りさせてもらった。
 本当、今日の先輩は過保護な感じだよね。

「――真白、もう体調はいいの?」

 下に行けば、そこにはもう紫乃ちゃんと賀来先輩の姿が。

「平熱よりちょっと高いけど、もう大丈夫だよ」

「本当? 悪かったらすぐに言うのよ?」

「わかってるよ。先輩にも散々言われてるから」

「それならいいけど。真白ってば我慢するから心配なのよ。あ、今日の体育は休みなさいよ? まだ本調子じゃないんだから」

「わ、わかってるって」

 本当。紫乃ちゃんも先輩と同じでやさしいんだから。
 それから四人で登校したけど、周りも慣れてきたのか、周囲の視線が痛いってことはなかった。とは言っても、一部はまだ睨んできたりって感じはあるんだけどね。それでも、直接手出しをする人は今のところ居ない。



「もう少ししたら、これを聞かせないとね。――ふふっ」



 和泉さんが、何か企んでいるなんて、気付けもなかった。
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