Love Box:)
『…そう、なんですか』
もう、終わりだ。
そう感じた私は目をぎゅ、と閉じて井上さんでいっぱいのこの部屋の香りを吸い込んだ。
目を開けると、その背中と、暗闇と、ほのかな橙色、それに淡く漂う白い煙。
(…忘れたく、ない)
全部、全部、大切にしよう。
『私も実は5年、片想いしてるんです』
諦めたような苦笑をこぼしながらドコを見るでもなく前をみて、そう独白のように呟く。
井上さんは「え、」と振り返って私を見た。
『その人は、人気もので、誰からも好かれて、有名で…。頭もよくて格好良くて、お金持ち』
そこで一旦、言葉を切る。
『そんなことは、どうだって、いいんです』
(…そう、じゃなくて、)
『だから初めは何とも、思いませんでした』
前方の壁から視線を移さず、微笑みながら私が静かにそう話せば、
井上さんは振り返ったまま何も言わずにジ、と私を見ていた。
(…どんな顔、してるかな)
彼が私を見つめるその顔は、どんなだろう。
それを見つめ返す余裕はないけれど、そんな事をしたらきっと溢れでてしまうから。
けれど、漠然とそんなことを思って。
(…いまので、バレちゃったかな)
それもそれで、仕方ない。玉砕のうちに入らないけれど。
5年間の甘苦いこの片想いの終止符にそれも、悪くない。