Love Box:)







みちるが出て行った。

たったいま、この部屋から出て行ったんだ。



(…俺に、)



俺に、別れを告げて。



それなのになんだ、何も変わらない。

もっと、そうだな。ミサイルが降ってくるとか大規模な地盤沈下が起こるとか世界が消滅してしまうとか、大きな変化があっていいはずなのに。



だって“みちると俺”が終わるってことはそれくらい――



俺たちの十年間は特別だった。世界中でお互いが一番幸せで誰よりも愛し合っていると100パーセント疑いもせずに真顔で言ってのけるくらいに。

特別だったんだ。俺たちの世界は。地球よりも宇宙よりもその向こうよりも大きくて、限りなく確かなものだったんだ。



永遠にそれは不変であるはずだったんだ。



それなのになんだ、これ。

俺の部屋。みちると何度も躰を重ねたこの空間。

あそこにもこっちにもみちるの残像がこびりついている。本を読むみちるも笑顔で寝転がるみちるもテレビにくぎ付けになったあと号泣する感受性の強いみちるもみんなみんな――。




もう、見れないっていうのになんだこれ。

“オワリ”は、これ程までに静かなものなのか。










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