イマージョン
「舞ちゃん」
「あ!美夢ちゃん!手紙読んでくれた?」
既に2階に居た舞は、お菓子を頬張りながら笑顔で私の答えを待っている顔をしている。
葡萄味マシュマロを机にぽんっと置いて舞の隣に腰掛ける。よく見ると舞はパリパリと紅茶味ビスッケトを次々と口に入れている。今まで私以外に休憩中に、お菓子を食べている人を見なかったので、その光景が珍しい。
「そのビスッケト紅茶味が珍しくて、しかも美味しいよね」
「そうそう、品出ししてる時に気になって買ったの。でも、まっずい!」
まっずい!などと言いながらも手に持ったビスッケトを口に運ぶ作業を止めようとしない。まっずい!と言うから、流れ作業に見える。
数あるお菓子の中から紅茶味ビスッケトを選んで食べているから気が合うかもしれないと感じる。
「あたしも、お菓子大好きで、いっつも食べちゃうんだよね。でも不味いかな?不味いのに何で食べてるの?」
「お腹空いちゃったからさ~。すぐ腹減っちゃうの、あたし」
お菓子を口に運ぶ作業を止めずに応えている。
「ね、ね、今日バイト終わったら、あそこのマック行かない?」
手紙の返事を待ちきれなかったのか舞から誘って来た。私の返事はもう決まっていたので、
「商店街出たとこのマックだね?いいよ」
と、私も残す事はこれっぽっちも無い葡萄味のマシュマロに夢中になりながら答えた。
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