LOST MUSIC〜消えない残像〜
ギターを抱きかかえて、部屋へと駆け込む。
おふくろの怒鳴り声も無視して、部屋に滑り込むと俺はその場に力なく崩れた。
あんな場所にギターをきっと捨てたおふくろも、いつまでもしがみつく俺も、どっちも許せない……。
一年以上触ってないのに、カバー越しなのに、指先はよみがえったように次第に熱を帯びてゆく。
感触が染み付いた指は、何も忘れてないんだ――。
俺は名残惜しく、薄暗い床に置いて手放した。
これ以上思い出してはいけない。
これ以上感覚を思い出したら、絶対辛くなるから――。