重なる平行線
本へ向けていた意識を外し、さらさらと木々のさざめく音に耳を傾ける。

私を包み込む、涼しくも暖かい空気に浸っていると、

   「美月」

優しげなそよ風が頬を撫でて通りすぎて、はらはらと持っている小説が音を奏でてページをめくっていく。

『もしかしたら。』
そう思ってはいたけど。
…本当に来るとは、ね。


顔を上げる。

視界に入るのは、妙に愉しげな顔をした水貴と、驚いた顔の……えーっと…何だっけ、…確か、津坂旭。

津坂は何故来たのだろう。これは少し予想外だった。

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