重なる平行線
「よっす」

おどけた言い方で、片手を挙げて近付いてくる水貴。

その後ろに居る津坂に軽くペコリとされたので、会釈を返しておいた。


「昨日ぶりだな、美月」すい、と左手を差し出される。

「そうだね」本をぱたりと閉じて、出された手を掴んで立ち上がった。
…人の手を握るのなんて、いつ振りだろう。

「ご予定は?」
片方の眉を上げて問う水貴。
この水貴の質問も予想済み。
水貴にとっても、多分予定調和。

「人と会う約束をしてるよ、連絡が来る筈だけど、時間はある」

殺人、誘拐(多分。まだ捜査中)事件の被害者の家族であり、生き残った私。

私の鏡みたいな姿形をした少年。

それを一歩下がった所で静観している、何で来たのか謎な少年の友人。

「じゃ、何処に行くの?」←少女
「んー、腹減ったし、飯でも喰いに行くか。旭、お前も来る?」←クローン野郎
「…え?ぁ、おう。」←やさやさお(超優男)

端から見たら、結構奇妙な人間模様だろうな。

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