17-セブンティーン-


当時の俺は、大人の男というものに計り知れないほどの恐怖心を持っていた。


それは《あの人》のせい。


俺は視線を、父さんの写真から自分の左腕に移す。

長袖に隠れた腕をぎゅっと握り、そっと捲ってみる。


俺の左腕は、火傷の痕がケロイド状に残っていた。


すぐに袖を戻す。

風呂の間も見ないようにしている。
洗うときはぎゅっと目を閉じる。


酒を呑んでいた《あの人》に熱湯をかけられたのだ。

とにかく《あの人》はアルコールが入ると豹変した。

お袋が夜働きに出ていたのをいいことに
アルコールを呑んだあと帰ってきた《あの人》は俺をよく殴ったらしい。


正直当時のことはあまり覚えていない。

だけどこの傷を見ると、吐きたくなるほど頭がおかしくなるような感覚に襲われる。

思い出してはいけないことを
思い出してしまいそうで。

いまだに底知れぬ恐怖のあまり、涙が出そうになってしまう。


当時の俺は大人の男を見ると、《あの人》のように
なにかの拍子に豹変するんじゃないかといつも思っていた。





< 126 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop