死にたかった

そしてこの前雨ちゃんはついに私に言った。彼が好きだ、と。
それは彼のことについて話していたときのことだ。
雨ちゃんは優しい笑顔で、随分昔の彼の話をしてくれた。
彼の過去を知れて嬉しいとは思ったけれど、でもそれで雨ちゃんを傷つけているのではないかと少し怖くもなった。
そして最後に雨ちゃんは言ったのである。
私が好きなこと、気付いてるんでしょ?
そのとき雨ちゃんは笑っていなかった気がする。
でも別に睨んでいただとかそんなわけでもない。
ただきっと、これが雨ちゃんの素なのだろうなと思うような、静かな表情だった。
この場合の私が好き、というのは多分、というか確実に、雨ちゃんが彼のことを好きだという意味だろう。
気付いているんでしょ?と言われたので私は何も考えずに頷いた。
雨ちゃんは笑っていた。そして最後に言った。
その台詞はよく覚えていないのだけれど。
そのとき雨ちゃんは泣いていて。
たしか、こんな台詞だった気がする。


幸せに、なってね。



私はまだ高校2年で彼も高校2年だ。
ついでに雨ちゃんは高校1年だ。
幸せになってね、というのはどんな意味だったんだろうか。
私は深く考えずに、もう一度頷いた。
その時ちゃんと笑えていただろうか、よく分からないけれど、雨ちゃんは泣きながら笑っていた。
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