君に触れたくて…




だけど今、俺は実感してる。


お前に愛されてるんだって。




それは偽りなのかもしれないし、俺の思い過ごしなのかもしれない。




だけどこんな俺を、
優しく包み込んでくれるお前を、
失いたくはなかった。




……多分お前は気付いてる。




俺の心がお前にないことを…



秋桜を好きだって気付いてる。




それでも知らないフリをしているのは、なぜなんだ。




「理音…」




俺の腕の中にいる梨加が、そっと口を開く。




「……愛してるよ」




ひとつ、涙が流れた。



胸が苦しくなった。


切なくなった。


悲しくなった。





愛してると言った、梨加の声は震えていて、俺はさらに梨加を強く抱きしめた。




2人が離れないように…




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