君に触れたくて…




「………幸せになれよ…」




部屋から秋桜の泣く声が聞こえる。




俺は苦しむ胸を押さえながら、玄関の扉を閉めた。




ズルズルとその場にしゃがみこむ。




「…っ…ぅ…泣く…な」




俺の目からは大粒の涙が零れていた。




「泣くな…泣くな…」




自分自身に言い聞かせる。




“泣くな”と、どれだけ言い聞かせても、涙は止まることはなかった。




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