月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
では仕方ない。

卑怯な手段を使おう。

「達郎兄ちゃんに高森さんのこと話しました」

高森さんの表情が、パッと変わった。

「達郎さん、何か言ってた?」

わかりやすい人だなぁ。

「興味はありそうでしたよ」

『ふーん』ってリアクションは興味ゼロではない…だろう多分きっと。

「そ、それで!?」

食い下がる高森さんに、もう一度、多江さんの病室を訊いた。

「北館の30*号室!」

今度は即答だった。


―――――――――――


いきり立つ高森さんをかわしたあたしは、松葉杖をついて多江さんの病室前まで来た。

多江さんもあたしと同じ個室だった。

松葉杖に体を預けながら、病室のドアをノックしようとした時、中から話し声が聞こえてきた。

「ほら、和夫さんの成績のこと気にしてるわよ」

「相変わらずだな、兄さんは」

会話の主は2人の男女。

女性の方は多江さんで、男性の方は知らない男の人の声だった。

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