月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
誰だろう。

疑問を持ったら即行動。

あたしは病室のドアをノックした。

「どうぞ」

多江さんの返事が返ってくる。

ドアを開けると

「あら旭さん」

多江さんがいつもの笑顔を見せた。

多江さんはベッドの上で上半身を起こしていた。

かたわらのイスにはひとりの男性。

白シャツにジーンズ。

真ん中で分けた髪の間からは黒ぶちの大きな眼鏡がのぞく。

男性は、あたしが松葉杖をついているのを見ると、立ち上がって、ドアを大きく開けてくれた。

「紹介するわ、旭さん。こちら関和夫さん」

「はじめまして」

男性、いや和夫さんはあたしにイスをすすめてくれた。

「和夫さん、この方が果穂里さんよ」

多江さんが和夫さんにあたしを紹介してくれる。

「旭果穂里です」

あたしは頭を下げた。

「貴女が果穂里さんですか」

和夫さんはにこやかに笑いながらあたしを見た。

和夫さんは細面で、年は多江さんと同じぐらいに見える。

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