月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「従姉なんですよ」

あたしは体温計を受け取りながら言った。

「その従姉の仕事の手伝いを達郎兄ちゃんがしててですね…」

麗美姉ちゃんが警察官だとか、達郎兄ちゃんが民間協力員だとかいう説明は、面倒臭いのでパス。

「…だから一緒にいる機会が多いんです」

「そうなの…」

高森さんは目を伏せた。

あれ、もしかして高森さんあきらめちゃったの?

そう訊くと、高森さんは首を振った。

「そうじゃないんだけど…ただ一緒にいる機会が多いっていうのがアレかなって…」

あきらめてるじゃん。

なんで自分の中で勝手に答を出しちゃうかなぁ。

そう考えた時、頭の中のもう一人のあたしが、ポンと手を打った。

「そういうことか…」

「どうしたの?」

あたしの独り言に、高森さんは不思議そうな顔をした。

「あ、いえ、何でもないです」

あたしはごまかすために作り笑いを浮かべると、体温計を脇に挟んだ。

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