君の左のポケットで~Now&Forever~
「ただいま」


レンの声に驚いて振り返る。

急いで玄関へ駆け寄る。


「おかえり、レン」

「めずらし」

「え?」

「今日は飛びついてこないんだな」


レンは笑って、わたしの頭を撫でた。


ソファへ向かうレン。

わたしは、すっかり沸騰してカタカタいっているヤカンをおろして、

レンのためにコーヒーを入れる。

今度は忘れずに、自分のも。


「はい」

「さんきゅ」


レンはひとつ息をついてから、カップを持ち上げる。

あ……

テーブルの隅に、水色の切れ端発見。

わたしはテーブルを拭くふりをして、ささっとそれを払う。


「これ飲んだら、出かけようか」

「うん」


わたしとレンは静かにコーヒーをすすった。

部屋のなかに、爽やかすぎる風がすっと入ってくる。


窓の外に視線を移し、

持ち上げたカップを両手で包んだレンは、

肘を太ももについて、

しばらく、じっと空だけを見つめていた。





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