君の左のポケットで~Now&Forever~
レン…

話しかけたいけれど、何て言ったらいいのかわからない。

レンの横顔を見つめたまま、わたしは言葉を探す。



レン、わたし、知ってるよ。

レンがずっと苦しんできたこと。

傍で見てきたから。



そう、言えたなら。

でも、言えない。

言っても、嘘っぽい。

レンはわたしが白クマだったこと、知らないんだから。



「オレのせいなんだ」



ふと、レンが呟く。

消えそうに、頼りない声で。



「オレが、お袋を殺したようなもんなんだよ」


「…レン」


「血が…赤い血がオレの服についてさ、

オレ、怖くてさ、どうしていいのか、何が起こったのかわからなくて」



レンは、星を見上げる瞳を地面に移し、ポツリポツリと話し出す。



「あの動物園の帰りだったんだ。

白クマのキーホルダー買ってもらってさ、

ケーキでも買って帰ろうって…」



「…うん」



「何で……何で飛び出しちまったんだろう。

オレが飛び出さなきゃ、お袋は…」



「…レン」



苦しそうに、一言一言を搾り出すように、レンは俯いたまま繰り返す。




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