君の左のポケットで~Now&Forever~
横顔が、とても切なくて、わたしはレンから目をそらす。


砂場のバケツを眺めてから、ゆっくりと星空を見上げた。

暗くて、深い、夜の空。

ちらちら瞬く星たち。


今夜は、何となく星の数が多いような気がする。

空気が澄んでいるのだろうか。

散らばった星たちは、互いに瞬いて、輝くことを繰り返す。



「ナナ」


ふいにレンが口を開いて、わたしの名前を呼んだ。

低く、小さな声で。



「…ん?」

「何も、聞かないの?」

「…レンが、話してくれたら、ちゃんと聞くよ」


レンは少し黙って、ゆっくり息を吐いて、呟いた。



「お袋なんだ」

「…うん」

「オレが5歳のとき…5歳の誕生日に、あの場所で、さ」

「…うん」

「横断歩道に飛び出したオレのこと、かばって」

「…うん」

「その日に、死んじまった」

「……うん」



レンは星空を見上げたまま、また深く息を吐いた。

膝の上で指をくんで、じっと、動かずに。


< 225 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop