Dear my Dr.
そうは言っても、もう10分くらい経つ。

まだホテルのロータリーに現れない。

なにしてんだろ…

ケータイにも出ないし。

マナーモードだから気付かないのかもしれないけど。

「美波さんのこと、お探しになってるのかもしれませんねぇ…」

「あの、私探して来ます!」

「それならわたしが…」

「いえ、大丈夫です!見つからなかったらすぐに戻ってきますから」

そう運転手さんに言い残して、またホテルのロビーに向かった。

バンケットの外にも、ちらほらとお偉い先生たちが立ち話してる。

悠ちゃんの姿はない。

…もぉー、どこ行っちゃったの?

化粧室に続く、すこし入り込んだ通路をのぞく。

すると、悠ちゃんの声。

そして、そのあとに続く、高めの女の人の声。

なぜか反射的に隠れてしまった。

一瞬目に入ったのは、普通の距離感ではない二人の影。

話の内容までは正確に聞き取れないけど…

気になる。

耳を澄ませていたら、コツッとヒールの音がした。

なに??

そおっと角からのぞくと、

悠ちゃんの胸に体を預けている女の人の姿。

……え???

どういうこと?

嫌な胸騒ぎがする。

ドキドキとうるさい心臓の音が、すぐそこにいる二人に聞こえそうなくらい。

見なかったことにしてしまいたい。

その一心で、その場から離れた。
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