Dear my Dr.
ついさっき奈保美には、ラブラブだよ、なんて言ったくせに…

私にはまだ、悠ちゃんについて、知らないことがたくさんあるような気がする。

全部知ることはできない。

わかってるけど…もどかしい。

「美波、先に家に戻ってる?僕は病院で少し仕事があるから」

「あぁ、うん…」

「中村さん、そしたら美波のこと自宅までお願いします」

バタンとドアが閉まって、また車は静かに走り出す。

軽めに手を振って見送ってくれる姿は、いつもと何の変わりもない。

…さっき見たのは、幻だった?

できるなら、そう思いたい。

だけど見てしまったものは、忘れることなんてできない。

黙ったまま外の景色を眺める。

「…美波さん?どうかされました?ご気分でもお悪いんじゃないかと…」

「いえ、大丈夫です!」

「それなら良いのですが…」

ミラー越しに運転手さんと目が合う。

私、そんな顔してる?

悠ちゃん、変に思わなかったかな?

あわてて作り笑顔をして、もう一度言ってみた。

「大丈夫ですから」



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