涙、時々ピース
「俺、邪魔にならないようにしますから…一生懸命働きますから、どうか此処で雇って下さい!」

そう言って、弘光は勢い良く頭を下げた。
俺はあまりの勢いに気圧されて、暫く呆ける。
何て見た目を裏切らない、爽やかな性格なんだ。
というより、困る。
この爽やか弘光君は、どうやらこの店を繁盛させる気のようだ。
しかし、俺は毎日それなりに生活出来るだけの収入があれば良いのだ。
よって俺は、忙しさなんぞ求めていないわけで。

「頼むよ、な、この通り!」

手を合わせて頼み込んでくる友人に、俺はまたもや深い溜め息を吐いた。
そして、未だに頭を下げたままの弘光を見る。

「仕方ないなー、もう…わかった採用。」

とうとう折れた俺が投げやりに言うと、辰巳が隠しもせずにガッツポーズ。
こいつは…、と呆れる俺の両手が、弘光に浚われた。
かと思うと、それは相手の大きな温かい手に強く握られる。

「有難うございますっ。俺、頑張りますから。」

そう言って弘光が浮かべた笑顔に、不覚にも俺の胸はきゅっと締め付けられた。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

傍においで
六太/著

総文字数/3,260

ファンタジー8ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
行き場がないなら、 此処に居ればいいじゃないか。 これは、霊感少年と泣き虫幽霊の奇妙で温かい話。
Dear…
六太/著

総文字数/7,760

その他20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
あなたの大切な方への言葉を届けます。 あなたの大切な方へと向けられた最期の言葉を。 あなたの御希望の内容をあなたのお書きになるものとそっくりな字で。 さて、今日も「最期の匂い」につられてあっちへふらふら、こっちへふらふら。 お客様、どなた宛てにお書きしましょうか?
追いかけてマイダーリン
六太/著

総文字数/1,285

ファンタジー5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
一度死んでしまえばそれっきり。 なのに、目の前に彼女がいる。 僕は彼女を追いかけて、六月の空の下、飛び出した。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop