どうしょうもねぇくれぇ、好き。
残念ながら女じゃねぇ俺は乙女心が分かんねぇ。
いや、男で乙女心が分かる奴の方が凄いんだけど。
でも瑞季の思ってる気持ちや、心の変化には気付いてやりたい。
その思いはある。
瑞季の右手に俺の左手を重ねる。
「あったかい…。」
「あぁ。」
瑞季が俺の手を強く握る。
俺も瑞季の手を強く握って。
「…時枝さん、渉の事好きだったの丸分かりだったんだもん。」
それを合図にしたかのように瑞季が頬を膨らませながら呟いた。
「丸…?」
「渉に告白してきた人、時枝さんっていうんだよ。
渉の事、ずっと授業中も休憩時間の時も見てた。あんなのじゃ好きですって言ってるようなものだよ。」
相変わらず頬を膨らませている瑞季の頬を撫でる。
すると、瑞季がくすぐったそうな顔をした。
「時枝さんよりも早く告白したかったな。」
そう言って俯く瑞季が、すげぇ可愛く見えた。
「でも、私も悪いかっ。中村くんを途中で選んだのは私だしね。」
瑞季がハハッと無理して笑いながら喋った言葉に不快感を得る。
それは、"中村"という言葉が瑞季の口から出てきたせい。