龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
「悪いお兄さんに食べられる子猫ちゃんってとこかしら?」

この女! 志鶴が誰なのか知っているんだ。

僕はヒヤヒヤしながら、無言でパフェをぱくつく志鶴を見た。

「ねえ、わたし前にあなたの従兄と付き合ってたのよ。素敵だったわよ。久しぶりに会ったけど相変わらず素敵ね。別れたのを後悔しちゃうなぁ」

志鶴の口元が微かに笑みを浮かべた。

「言いたい事はそれだけ?」

志鶴が楽しそうに言った。

「圭吾さんが前に誰と付き合っていようと興味ないわ。今はわたしのもので、これからもわたしのものだから」

そう言って、これみよがしに指輪をはめた左手を上げて見せつける。

どうやら僕の小さな龍は鋭い牙を持っていたらしい。

「さっさとあなたのアクセサリー達を連れてあっちへ行って。わたし、デート中なの」

「アクセサリー?」

「頭の回転も悪いの?
そこにいる金メッキみたいな彼氏たちの事よ。かわいそうにね、何人連れて歩いたところで圭吾さんには敵わない。わたしの圭吾さんは本物の黄金だから」

志鶴はそれだけ言うと、何事もなかったようにパフェを食べだした。

意地悪女が怒りで真っ赤になりながら僕らの元を離れていった。



「参った」僕は両手を上げて降参した。

「意地悪な魔女は王女様に退治されましたとさ」

「めでたし めでたし かい?」

僕が笑いながら言うと、志鶴は悪戯っ子のように微笑んで僕の口にパフェを突っ込んだ。





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