龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
土曜日に、志鶴は彩名のお下がりだという黒のチェックのワンピースでおめかしをしていた。

彩名の服なら目の玉が飛び出るような値段のはずだ。

だが、シンプルなデザインの服は志鶴によく似合っている。

ピンクのリップグロスをつけてつややかな黒髪を肩にたらした姿はまるで人形のように愛らしかった。


僕らは映画を見て、少し遅い昼食をとった。

食後に志鶴が大きなチョコレートパフェを頼んだ。

あの小柄な体のどこにそんなに入るのか不思議だが、たぶんペロッとたいらげるんだろう。


「あら、羽竜くんじゃない? 久しぶりね」

気取った女の声がして、相手を見た途端に僕はうんざりした。


名前は何だっけ?


とにかく数年前、前の恋人の優月と別れた後に自棄になって一ヶ月だけ付き合った女だ。

外見がいいだけの心のない女。

男をアクセサリーかトロフィーのように扱う女。

今日は三人だけかい?

僕は意地の悪い目で彼女の取り巻きの男達を見た。


「可愛いわね、妹さん?」

僕に妹がいない事は百も承知だろう

「志鶴は従妹だよ」

僕は慎重に答えた。
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