コイソメル【BL/ほのB】
「恋愛なんて、するだけ無駄でしょう」
たった1人の誰かの為にドキドキして。
一喜一憂して。
そんな風に一時の気の迷いみたいな、感情に左右されるなんて馬鹿みたいだ。
「やること、やりたいことは目の前に山ほどある。でも恋愛なんてしたら、それだけになってしまう。少女漫画の主人公みたいなことになりたくなんてないです」
「少女漫画読むんだ?」
ビックリしたような顔で会長は返してくる。
そんな彼を無視して、僕は言葉を続けた。
「今の会長だってそうじゃないですか。フラれて落ち込んだり、言い寄られて困ったり」
「それが恋愛じゃん」
「他人に振り回されて、挙げ句縛られるなんてごめんです」
僕は、誰のものでもない。
誰かの為に頑張って、報われるの?
誰かの為に、ってそんなの馬鹿馬鹿しい。
「もしかして、ツラーい恋愛でもしたことあんの?」
「無いですけど」
「……否定ばっかだな」
はぁ、と大袈裟に溜め息を吐いてみせる会長は、カウンターから降りるなり、僕の肩を掴んで無理矢理自分の方へ向かせた。
僕があからさまに嫌な表情で会長を見上げると、逆に彼はニコりと笑みを浮かべ、直ぐに真剣な表情になる。