誠ノ桜 -桜の下で-



一瞬ならまだ簡単に防げるが、立て続けに同
じように攻撃が来ると押される。

咄嗟の守りでは、男の力には敵わない。

その咄嗟の守りが、続く事になるのだから。


それが、凜の唯一の弱点だ。




試合開始から間もなく、凜の喉元には沖田の
竹刀が宛てられた。


「俺の勝ち…で、いいよね?」


凜はへなへなと座り込む。

力が抜けてしまった。


「大丈夫っ!?」


慌てて声を掛ける沖田に、凜はへなりと笑う。


「初めて……初めて負けた…」


呆然としていた凜だが、今度はおかしそうに
クスッと笑った。


「負けって…何だか、力が抜けるね…」


沖田も微笑を浮かべ、凜と目線を合わせるよ
うにしゃがんだ。


「いい?…聞いても」


約束だからと、凜は頷く。

それを確認すると、沖田は口を開いた。


「凜ちゃんの、昔の話が聞きたい」



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