『箒星の組み紐』
「確かにそうですね。僕と握手をしてもらえませんか?」

西村は鮎川の右手をぎゅっと握り締めたあとに、そっと自分の胸元に引き寄せた。

その瞬間、バチッとお互いの目と目が合わさる。

西村は極度の緊張からか、瞳孔が開いて小刻みに眼球が揺れている。

西村はゆっくりと深呼吸をして、そっと目を閉じ、もう一度、鮎川の目を見詰めて、

しっかりと暗黙の了解を得てから、そっと口と口を重ね合わせた。

当分の間の『さよなら』と『ありがとう』を、熱い口付けに想いを伝える。

今夜のクリスマスの奇跡は、さらに加速度を増して西から東へ東へと伝わっていった。
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