たんすの中の骨1

私までうんざりした。
古沢はこの前、私とアンが付き合っているかどうか聞いてきたのだ。

私たちはレズでもカップルでもない。
幼なじみで、お互いを良く知っていて、ただ一緒にいるだけなのに。
そこには無理も緊張もいやらしい気持ちも、何もない。

息のしやすいほうに流れ着いたら、アンと泉がそこにいた。
そんな感じだ。

なにがおかしいっていうのだろう。
こんな質問を 、いったい何回受ければいいのだろう。

目の前で大げさにため息をついて、私は泉の学ランの袖をつかんでずんずん歩き出した。

「失礼します、せんせい。ごきげんよう」

「おい!お前、瀬戸のノート取ったのかよ」

古沢の声を背中にかばんの金具を開けた。
瞬間、昨日までは感じなかった違和感がのっそりと頭をもたげた。

何かおかしい。

「佐倉・・・?」

と泉が何かを感じて私の顔をのぞきこんだ。
私はかまわずにかばんの中をごそごそと探る。

「ノートはある」

問題集も、宿題も、財布も、ある。
必要なものはある。
けど。

昨日、「なおくん」が拾ってくれたものの中に、唯一、なかったもの。

「あぁ!」

私は大声をだした。泉も古沢もびっくりして体をぶるっと震わせた。


「手帳がない!!」


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