たんすの中の骨1




彼はアルバイトの「なおくん」。

見たところ大学生。そう、大人の男の人なのだ。



私はまだ、校舎を駆け回り、ぎゃあぎゃあ騒ぐおさるさんのような男子しか知らなかったから、初めて彼をこの本屋で見たとき、体中の細胞がさわぎ出すのを感じた。


ひとめぼれだ。


自分の単純さに驚きながらも、生まれて初めて芽生えた、このお腹をくすぐられるような
気持ちをもてあましたまま、私は今日もこっそり彼を見ていた。
はずなのに。


「ぅわっ!!」



どさどさ、と音を立てて、私の黒皮のかばんから教科書やらピンクの手帳やら財布やらが飛び出した。
レジから帰ってきたアンと、情けない顔をした私が万引き防止のミラーから転んだ私を見つめている。


「あんた何してんの」
「痛い・・・」


何につまずいたのかわからないまま、アンと二人でさっさと荷物をまとめて帰るつもりが、ふと目線を上げると「なおくん」がいた。

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